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  小至明旦一陽来復(コラム)


 杜甫に「小至」という七言律詩があります。「小至」とは冬至の一日前。冬至後一日という説もありますが、明日が冬至です。
  「小至」   杜甫
 天時人事日相催,冬至陽生春又來。
 刺繍五紋添弱線,吹葭六管動浮灰。 (飛灰)
 容待臘將舒柳,山意衝寒欲放梅。
 雲物不殊郷國異,教兒且覆掌中杯。
  天時人事 日に相ひ催し、
  冬至陽生 春又来たる。
  刺繍の五紋 弱線を添へ、
  吹葭の六管 浮灰を動かす。
  岸容 臘を待ちて将に柳を舒し、
  山意 寒を衝(つ)き梅を放たんと欲す。
  雲物殊(こと)ならずも 郷国異にす。
  児をして且つ掌中の杯を覆せ教(し)む。
・催:急(せ)きたてる。
・刺繍…:春の準備として春の祭祀のときに着る「刺繍五彩雲」の紋(あや)がある礼服を整える様子を言うか。
・吹葭:古代の気をうかがう法。天地間の六種の気「陰・陽・風・雨・晦・明、または寒・暑・燥・湿・風・火」を探る法であったか。
・臘:冬至の後、第三の戌の日に百神を合せまつる。又、其の祭=蜡祭、年末に行う。
・舒:伸ばす。
天時も人事もおしせまり、
冬至を迎え陽気の生れるの季節春がまた来ようとしている。
日がのびて女人の刺繍する五色の紋に細い糸が増し、
気をうかがう儀式の六管に葭の灰が散り集まって(まさに春が来ようとしている。)
岸の様子を見ると蝋祭の近づくのを待って柳が芽を伸ばそうとし、
山の様子をうかがうと寒を突いて梅の花が開こうとしている。
雲の流れる様は違うとも見えないが、ここは故郷とは違った土地、
稚児に命じて飲んでいた掌中の杯を伏せさせた。

 杜甫の生活が比較的安定して、気持も比較的落ち着いていた時期のもののようです。冬至前後の季節の移ろいを、春の準備や春迎えの儀式、河辺の柳の芽のふくらみや山の梅の花ほころびを、冬の中に春をはぐくんている光景として描き出しています。後の2句には流れゆく雲に故郷を思い、異郷にあることを改めて痛感しながらも、痛飲する杯をふせるという所作に杜甫の気持を読むことが出来ます。
 「冬至陽生春又来」と詠っていますが、明日は「一陽来復(いちようらいふく)」です。これは、易で、陰がきわまって冬至に陽が初めて生じることから、冬至を指します。
 さて、これを機に世の中「一陽来福」とはならないものでしょうか。
              (二〇〇八・一八・二〇)
by teinen-t | 2009-11-28 22:05 | コラム
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